今ではどこの企業にもある『お問い合わせ窓口』。
オペレータの人数が多く、大規模になるとよく『コールセンター』という呼び方をしますね。
そんなコールセンターにも『AI』の時代がやってきたようです!
「オペレータが顧客の相談やクレームに対応する場がコールセンター」という認識が強かったため、最初AIと言われても何に活用されるのかピンときませんでした。
AIがオペレータの役割を担い顧客の電話対応を行うのかと思いましたが、そうなるとAIにも対応の限界があったり、顧客の感情に寄り添うことができないのではないかと感じました。
では、コールセンターという場で電話対応以外にAIが必要になるのはどんな場面なのでしょうか?
また、その時にAIはどんな働きをし、どんな役割を担うのでしょうか?
『感情解析コールセンターAI』とは…?
音声感情解析AIのEmpathとコールセンターBPOのTMJがバーチャル・アシスタント搭載の感情解析コールセンターAIを開発
コールセンター白書によると、離職につながる職場での最も不快な体験として「同僚との人間関係」が挙げられています[1]。実際、オペレータの監督者(以下、SV)は平均で一人あたり10人弱のオペレータを支援しているため[2]、業務過多に陥っており、オペレータとのコミュニケーション不足が発生しています。EmpathとTMJは約4年にわたり、コールセンターにおける音声感情解析AIの有効性検証を実施してきました。その結果、感情解析コールセンターAI(以下、本製品)によるSVならびにオペレータへのサポートが、SVの負担を軽減することでチーム内のコミュニケーションを円滑にし、生産性向上に寄与することが明らかになりました。この成果を踏まえて2018年12月27日に両社は事業提携契約を締結し、本製品を共同開発しました。
[1] コールセンター編集部編 『コールセンター白書』 (月刊コールセンタージャパン編集部、2018年) 32ページ。
[2] 一般社団法人日本コールセンター協会(CCAJ) 情報調査委員会「『2018年度 コールセンター 企業実態調査』報告」 (一般社団法人日本コールセンター協会、2018年) [https://ccaj.or.jp/telemarketing/doc/callcenter_research_2018.pdf](最終検索日: 2019年7月5日)
コールセンター において、SVの主たる業務に「オペレータのフォローや指導、教育」が挙げられます。 これまではどのオペレータをサポートすればいいのかが必ずしも明確ではなかったため、効率的なフォローが困難であるという課題がありました。そこで、本製品は業務通話中のお客様とオペレータの感情を解析することで問題が起こりそうな通話を検知し、リアルタイムでSVにアラートを送信。SVはタブレットやPCモニター上に通知されたアラートをもとにサポートが必要なオペレータを即座にフォローできます。この結果、従来よりもオペレータに対するフォーロー・タイミングが早くなり、オペレータに対するサポートがより効率的になりました。
また、これまでは業務時間内にオペレータの抱える問題や悩みを把握することが困難であり、オペレータからの業務時間外の相談がSVの残業時間を増やす事態となっていました。そこで本製品はオペレータの通話実績と感情値をカルテ化することで、SVが業務時間内にオペレータの状態を確認することを実現、結果としてオペレータの抱える悩みや問題の解決速度がはやまり、業務時間外のオペレータからの相談が減少しました。
一般的にオペレータのモチベーションが維持できない要素として、SVに対する不満があげられます。その原因として業務過多によりSVがオペレータと十分に適切なコミュニーケーションがとれていないことが予想されました。そこで本製品はオペレータが操作するPC画面上にバーチャル・アシスタントを実装、感情解析の結果に応じて対話が上手く行った場合にはSVの代わりに褒めたり、お客様の怒りが強くなった際には慰めたりすることでオペレータをサポートし、モチベーション維持に貢献しました。
その一方で、通話中にサポートが必要となった場合にオペレータがSVにヘルプを呼べる機能も搭載。必要なタイミングでSVからの適切なサポートを受けているとオペレータが実感できるようになり、オペレータの出勤率が99.2%に安定し、成約率が1.9倍向上するなどの結果に寄与しました。
AIはオペレータと顧客だけではなく、オペレータとSVを繋ぐ役割まで担っていたのですね。
近年、あらゆる所で問題となっているコミュニケーション不足。
人と人の関係だからこそ相手の感情を判断するのは難しいことですし、自分に余裕がない時に相手を思いやることはなかなかできないことも多いのが事実です。
しかし、そんな時にAIが人と人の架け橋となり、コミュニケーションの一旦を担う日が、もうすでに来ていたのかと驚きました。
[最新更新日:2019年7月10日]