(前号までのあらすじ)
我孫子市に住む、銀行員である剛は、夢の中で一つの町を築き上げてきた。その町に現れる女性が何かを伝えようとしていると感じた剛は、町は実在するのではないかと考え、ネット検索のサイトに情報を募る記事を投稿した。
横浜に住むOL美貴は、繰り返し見る夢に悩まされていた。町が実在し、何者かが夢によって何かを自分に告げようしているのではないかと考えた美貴は、大縮尺の地図やネット情報から、ついにあの町を見つけ出す。茨城のI町だった。
剛の投稿を偶然目にした美貴は、名を偽り、探している町がI町であることを書き込む。その書き込みにより、剛は、車でI町を訪れる。同じ日、美貴も電車で町を訪れたのだった。
剛は夢の中であの女性に岩場へと導かれる。翌日、岩場へと向かう剛は、そこに立つ女性の後ろ姿を目にする。
我孫子市に住む、銀行員である剛は、夢の中で一つの町を築き上げてきた。その町に現れる女性が何かを伝えようとしていると感じた剛は、町は実在するのではないかと考え、ネット検索のサイトに情報を募る記事を投稿した。
横浜に住むOL美貴は、繰り返し見る夢に悩まされていた。町が実在し、何者かが夢によって何かを自分に告げようしているのではないかと考えた美貴は、大縮尺の地図やネット情報から、ついにあの町を見つけ出す。茨城のI町だった。
剛の投稿を偶然目にした美貴は、名を偽り、探している町がI町であることを書き込む。その書き込みにより、剛は、車でI町を訪れる。同じ日、美貴も電車で町を訪れたのだった。
剛は夢の中であの女性に岩場へと導かれる。翌日、岩場へと向かう剛は、そこに立つ女性の後ろ姿を目にする。
「あっ・・・・・・」
女性が声を上げる。
剛は、とっさに女性の脇をすり抜けて、岩場へと素早く足を繰り出し、岩の一つにはり付いた紙片を手で掴み、拾い上げた。
紙片に書かれたものが目に入った瞬間、目がそれに釘付けになり、躰が固まった。躰を起こして、ゆっくりと女性の方に向き直った。
女性が危なっかしい足取りで岩の上を飛び移ってくる。二人は、一つの比較的平らな岩の上で向き合った。
「大丈夫ですか。あの、ありがとうございました」
女性がつばの広い帽子を取ってぺこりと頭を下げて、お辞儀をした。
小ぶりな顔立ちの中でまっすぐに向けられた目がだれかに似ているような気がした。だれだったろうか。すぐには思い出せそうになかった。愁いと強さの二つを帯びた目をしていた。